研究・解説一覧へ戻る
02|治療の選択肢を知る二重特異性抗体

BISPECIFIC ANTIBODY|2つの標的を一つの薬で捉える

二重特異性抗体
とは

二つの細胞をつなぐ、または二つの治療標的を同時に抑える抗体です

通常の抗体薬は、基本的に一つの標的を認識します。二重特異性抗体は、左右の結合部分などを設計し、異なる二つの標的へ一つの薬で結合できるようにした治療です。

すべてが同じ仕組みで免疫を活性化するわけではありません。T細胞とがん細胞をつなぐ薬、二つの増殖信号を抑える薬、免疫と血管の両方へ働く薬などがあり、効果と副作用も異なります。

BINDING TWO TARGETS

一つの抗体が、二つの相手を認識します

A標的 1がん細胞・T細胞・受容体など
二重特異性抗体2つの結合部
B標的 2別の細胞・別の信号・同じ標的の別部位

「二つを結ぶ」という基本は同じでも、何と何を結ぶかによって治療の目的が変わります。

FOUR DESIGNS

二重特異性抗体には、主に4つの設計があります

01CD3 × がんの目印

T細胞とがん細胞をつなぐ

T細胞をがん細胞の近くへ引き寄せ、攻撃につなげます。DLL3×CD3、BCMA×CD3などがあります。

02異なる2つの受容体

2つの増殖経路を抑える

がんが使う二つの信号を一つの抗体で抑えます。EGFR×METなどがあります。

03免疫抑制 × 血管新生

免疫と血管を同時に狙う

免疫のブレーキと、がんを支える血管の信号を同時に抑えるPD-1×VEGFなどが研究・開発されています。

041つの標的 × 2つの部位

同じ標的の2か所へ結合する

同じ分子の異なる場所をつかみ、結合や受容体の集まり方を変えるHER2二部位結合型などがあります。

T-CELL ENGAGER

T細胞誘導型は、免疫細胞とがん細胞の距離を縮めます

01T細胞のCD3へ結合
02がん細胞の目印へ結合
03二つの細胞を近づける
04T細胞が傷害を始める

血液がんでは複数の薬が診療で使われ、固形がんでもDLL3を標的とする小細胞肺がん治療などが臨床へ進んでいます。がん細胞に目印があることに加え、T細胞が働ける状態か、正常組織への影響はないかを確認します。

EXAMPLES

すでに使われる治療と、研究中の治療

  • DLL3×CD3:小細胞肺がんでT細胞を誘導するタルラタマブ
  • BCMA×CD3・CD20×CD3:多発性骨髄腫やリンパ腫で使われる治療
  • EGFR×MET:特定の非小細胞肺がんへ使われるアミバンタマブ
  • PD-1×VEGF:免疫と血管新生を同時に狙う開発領域

PATIENT SELECTION

治療前に確認すること

  • 標的分子、遺伝子変異、発現量が適応条件に合うか
  • がんの種類、病期、過去の治療
  • 感染症、血球、肝腎機能、呼吸・神経症状
  • 入院や長時間観察を含む初回投与の方法

SAFETY

副作用は「つなぐ相手」によって変わります

CD3とつなぐ薬

発熱、低血圧、低酸素などのサイトカイン放出症候群(CRS)、神経症状、血球減少、感染症に注意します。段階的な増量や投与後の観察が必要な薬があります。

増殖・血管の信号を抑える薬

点滴時反応、皮膚症状、むくみ、高血圧、蛋白尿、出血など、標的とする経路に応じた副作用を確認します。

「二重特異性抗体」という名前だけでは、副作用を一括りにできません。薬の二つの標的と、投与直後・投与中に注意する症状を確認します。

ADC OR BISPECIFIC

ADCとは、運ぶものと目的が違います

治療ADC二重特異性抗体
基本構造抗体+リンカー+薬物二つの結合部を持つ抗体
主な目的標的細胞へ薬物を届ける二つの細胞・信号を結ぶ、または同時に抑える
確認すること標的、リンカー、薬物、副作用二つの標的、免疫反応、投与時の副作用