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03|治療を受ける身体を知る炎症と身体の状態を知る

CANCER AND INFLAMMATION|患者さんとご家族のためのがん解説

がんと慢性炎症

炎症は、身体を守り、傷ついた組織を修復するための反応です

炎症は、感染やけがなどから身体を守るために起こります。

免疫細胞が集まり、異物や傷んだ細胞を処理し、組織の修復を進めます。赤み、腫れ、熱、痛みなどは、この働きに伴って現れる反応です。

役目を終えた炎症は、修復とともに収まります。刺激が長く続き、炎症の信号が繰り返し出される状態が慢性炎症です。慢性炎症では、身体を守るための反応が長引き、周囲の細胞や組織の状態にも影響を与えます。

慢性炎症は、がんと互いに影響し合います

炎症が長く続く組織では、免疫細胞からさまざまな情報伝達物質が放出されます。細胞の傷と修復が繰り返され、細胞の増殖、血管の形成、免疫の働きにも変化が生まれます。こうした状態が重なると、がんの発生や進行に関わる環境がつくられることがあります。

がん細胞も、周囲の免疫細胞や線維芽細胞へ信号を送り、炎症を起こす物質を放出します。慢性炎症ががんに影響し、がんがさらに炎症を促すという循環が生まれる場合があります。

FIGURE|終わる炎症と、くすぶる炎症

炎症が「終わる」か、
「くすぶり続ける」か

組織の修復とともに収まる炎症と、がんの周囲で慢性化して循環する炎症を対比した概念図
終わる炎症

原因を処理し、修復して元の状態へ戻る

  1. 原因が生じる傷や感染に反応する
  2. 免疫が処理する異物や壊れた細胞を片づける
  3. 炎症が終わる信号が止まり、免疫細胞が引き上げる
くすぶる炎症

刺激が残り、周囲の環境が変わり続ける

  1. 刺激が残るがんや組織の傷が信号を出し続ける
  2. 免疫が居続けるマクロファージや線維芽細胞が集まり続ける
  3. がんが利用する血管や修復反応を使い、成長しやすくなる

分かれ目は、原因を処理したあとに炎症の信号が止まり、免疫細胞が引き上げられるかどうかです。

※炎症と組織環境の関係を分かりやすく整理した概念図です。実際の反応は、病状や治療内容によって異なります。

がんの周囲には、炎症を含む微小環境があります

がんの周囲には、がん細胞のほかに、マクロファージなどの免疫細胞、線維芽細胞、血管、細胞外マトリックスが存在します。これらがつくる局所の環境を、腫瘍微小環境と呼びます。

マクロファージは、異物や傷んだ細胞を処理し、炎症と修復を調整する免疫細胞です。がんの周囲では、炎症を促す働き、組織を修復する働き、血管をつくる働きなど、さまざまな性質を示します。その働き方によって、がんへの免疫反応や治療への反応も変化すると考えられています。

局所の炎症は、身体全体の状態にも表れます

がんや治療に伴う炎症の信号は、血液を介して身体全体へ届くことがあります。発熱、だるさ、食欲低下、筋力低下、体重減少などは、炎症、栄養状態、治療の影響が重なって現れることがあります。

炎症が長く続くと、エネルギーやたんぱく質の使われ方が変化し、食事をとっていても筋肉や体重が減る場合があります。治療を受ける身体を考えるときは、がんの大きさだけでなく、食事量、体重、筋力、活動量、睡眠、痛みなどの変化も大切な情報になります。

炎症は、検査値の推移から読み取ります

血液検査では、CRP、白血球数とその分画、好中球とリンパ球の比率、アルブミンなどが、炎症や身体の状態を考える手掛かりになります。研究では、IL-6などの炎症に関わる物質も調べられています。

CRPは、感染、組織の傷、手術、放射線治療、薬剤、がんに伴う炎症など、さまざまな理由で変化します。数値の推移を、症状、画像、ほかの検査、治療の時期と重ねることで、現在の身体で何が起きているのかを整理しやすくなります。

CRP身体の中で起きている炎症の変化を見る
白血球分画好中球やリンパ球など、免疫細胞の構成を見る
NLR好中球数とリンパ球数の比から全身状態を捉える
アルブミン栄養、炎症、肝機能などが重なる身体の状態を見る

治療に伴う炎症も、経過を知る手掛かりです

手術では傷を修復するための炎症が起こり、放射線治療では照射した組織に反応が現れます。薬物療法や免疫チェックポイント阻害薬でも、がんへの反応や副作用に伴って炎症の所見が変化することがあります。

画像に映る影やPETの集積も、がん細胞の活動に加えて、感染や治療後の修復によって変化します。治療前後の画像、症状、検査値、治療からの時間を重ねて見ることで、炎症の意味を具体的に捉えられます。

炎症の原因と、患者さんの状態を一緒に見ます

炎症の背景には、がん、感染、治療による反応、臓器の障害、持病など、複数の要因があります。現在の病状とこれまでの経過を重ねることで、どの要因が強く関わっているのかを整理できます。

治療を考えるときは、がんへ働きかける方法とともに、感染への対応、痛みや発熱の管理、食事と栄養、筋力や活動量を支えることも重要です。炎症の変化を追うことは、治療を受ける身体の状態を知ることにつながります。

身体の状態から治療を考える

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