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03|治療を受ける身体を知る腸内環境と免疫を知る

GUT MICROBIOME AND IMMUNITY|患者さんとご家族のためのがん解説

腸内環境と免疫

腸は、食べ物を消化し、微生物と免疫が情報を交わす場所です

私たちの腸には、多くの細菌やウイルス、真菌などが暮らしています。これらの微生物と、腸の粘膜、免疫細胞、食事から生まれる代謝物が関わり合い、「腸内環境」をつくっています。

腸には、食べ物や微生物など、身体の外から入ってきたものが集まります。腸の免疫は、身体に必要なものと排除するものを見分けながら働いています。

腸内環境は、細菌・粘膜・免疫がつくる生態系です

腸の表面は、粘液と腸上皮細胞によって守られています。この粘膜バリアが、腸内細菌と免疫細胞の距離を保ち、必要な情報を受け渡します。

腸内細菌の構成、食事、便通、薬剤、感染、睡眠や活動量などが変化すると、腸内環境も変わります。粘膜バリアの状態が変化すると、細菌由来の物質が免疫へ届きやすくなり、炎症の信号が続くことがあります。

FIGURE|腸内環境と免疫

腸内環境が乱れると、何が変わるのか

腸の内側と、その下で働く免疫を横から見た断面図です。

図の上側 腸の内側・腸内細菌中央 粘液・腸粘膜図の下側 身体側・免疫細胞
腸内環境が保たれた状態から、粘膜バリアが弱まり、細菌由来の物質が通り、免疫への刺激が続くまでを示した概念図
  1. 腸内環境が保たれる多様な菌、厚い粘液、閉じた細胞のすき間
  2. 粘膜バリアが弱まる菌の構成が変わり、粘液が薄くなる
  3. 細菌由来の物質が通る開いたすき間から、免疫へ刺激が届く
  4. 免疫刺激が続く免疫細胞が集まり、炎症の信号が続く

菌の種類、粘液の厚さ、細胞同士の結びつき、細菌由来の物質が通る量、免疫の反応が順に変わります。

※腸内細菌、粘膜バリア、免疫の関係を分かりやすく整理した概念図です。実際の腸内環境は、食事、薬剤、感染、病状などによって変化します。

腸内細菌がつくる物質が、免疫へ情報を伝えます

腸内細菌は、食物繊維などを利用して、酪酸、酢酸、プロピオン酸といった短鎖脂肪酸をつくります。これらの物質は、腸上皮細胞のエネルギー源となり、粘膜バリアや免疫反応の調整に関わります。

胆汁酸やアミノ酸から生まれる代謝物も、マクロファージや樹状細胞、T細胞などへ情報を伝えます。腸の中で起きていることが、血液や免疫を通じて、身体のさまざまな場所へ影響する仕組みが研究されています。

がん治療も、腸内環境に影響します

手術、抗がん剤、放射線治療、免疫治療は、食事量や消化吸収、便通、腸粘膜、腸内細菌の構成へ影響することがあります。感染症に対する抗菌薬や、胃酸を抑える薬なども、治療経過の中で腸内環境に関わります。

治療中の下痢、便秘、腹痛、食欲低下、体重減少は、薬剤の副作用、感染、炎症、栄養状態などが重なって現れます。症状と治療時期を重ねて見ることで、身体の変化を整理できます。

下痢、腹痛、血便、発熱が続く場合は、治療の副作用や感染を含め、早めに医療機関へ相談します。

腸内環境と、免疫治療の反応が研究されています

免疫チェックポイント阻害薬を受けた患者さんを調べた研究では、治療が効いた患者さんと効きにくかった患者さんで、腸内細菌の多様性や構成に違いが報告されています。

研究ごとに関連する細菌は異なり、治療効果を決める一種類の菌は定まっていません。腸内細菌全体の構成、代謝物、粘膜バリア、患者さんの食事や薬剤などを合わせて考える段階にあります。

腸内環境を治療へ生かす研究も進んでいます

便微生物移植(FMT)と免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせる臨床試験も行われています。2024年には、抗PD-1抗体が効きにくくなった進行がん患者さんを対象とした小規模試験で、免疫や腫瘍の変化が報告されました。

2026年には、非小細胞肺がんと悪性黒色腫を対象とした第2相試験の結果も発表されています。限られた人数で得られた結果をもとに、効果の再現性、安全性、適した患者さんや細菌の条件を確かめる研究が続いています。

食べることと、出すことから身体の状態を見ます

腸内環境を考えるときは、食べられている量、食事の種類、便の回数や形、下痢や便秘、体重の変化を確認します。

食物繊維や発酵食品を取り入れられるかどうかは、治療内容、腸閉塞のリスク、下痢、白血球数、消化機能によって異なります。抗菌薬は必要な感染症の治療に使い、使用した時期を治療経過と合わせて記録します。プロバイオティクスやサプリメントも、現在の病状と治療内容を踏まえて選びます。

腸内環境は、食べる、消化する、吸収する、排泄するという身体の働きを通して、治療を受ける状態を支える一つの要素です。

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