ONCOLYTIC VIRUS THERAPY|腫瘍溶解性ウイルス療法
がん細胞を壊し、
免疫を動かす。
がんウイルス療法とは
がんウイルス療法(腫瘍溶解性ウイルス療法)は、がん細胞で選択的に増えるウイルスを利用し、がん細胞を内側から壊す治療です。
現在の研究では、直接がん細胞を壊すだけでなく、がんの目印を免疫へ知らせ、免疫細胞が働きやすい腫瘍環境へ変える作用が注目されています。
HOW IT WORKS
二つの方向から、がんへ働きかけます
- 01がん細胞へ感染する
正常細胞への影響を抑え、がん細胞で増えやすくなるよう設計されたウイルスを使います。
- 02がん細胞の中で増える
感染したがん細胞の中でウイルスが複製し、細胞を内側から壊します。
- 03がんの目印を放出する
壊れた細胞から、がん抗原や免疫を呼び込む信号が周囲へ放出されます。
- 04免疫反応へつなげる
抗原提示やT細胞の浸潤を促し、免疫が働きにくい腫瘍環境を変える研究が進んでいます。
CURRENT USE IN JAPAN
日本では、一部の脳腫瘍で承認されています
遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1型のテセルパツレブ(G47Δ、製品名デリタクト)が、悪性神経膠腫を対象に条件及び期限付きで承認されています。
すべてのがんへ一般的に使える治療ではなく、ほかのウイルスやがん種の多くは臨床試験・研究段階です。
COMBINATION THERAPY
免疫療法との組み合わせも研究されています
腫瘍溶解性ウイルスによって抗原提示や免疫細胞の浸潤を促し、免疫チェックポイント阻害薬が働きやすい状態へ近づける研究があります。
どの治療と、どの順番で組み合わせるか。腫瘍微小環境を見ながら治療を組み立てることが、重要な研究テーマになっています。
LATEST CLINICAL RESEARCH|2025
難治性肝がんに対する、がんウイルス療法の最新研究
腫瘍溶解性ウイルス「VG161」の第Ⅰ相臨床試験
2025年に『Nature』へ掲載された多施設第Ⅰ相試験では、複数の治療を受けた治療抵抗性の肝細胞がん患者34人に、腫瘍内投与するVG161が検討されました。客観的奏効率は17.7%、病勢制御率は64.7%でした。
VG161は、がん細胞を壊すヘルペスウイルスを基盤に、IL-12、IL-15、IL-15受容体α、PD-1/PD-L1経路を妨げる分子を腫瘍内で働かせるよう設計されています。直接的な腫瘍溶解と、免疫環境の変化を重ねようとする研究です。
初期段階の単群試験であり、効果を確定するには比較試験が必要です。一方で、標準的な治療後の難治性肝がんを対象に、臨床で安全性と治療反応が検討された点に意味があります。
BEFORE CONSIDERING
治療を考える前に確認したいこと
- 対象となるがん種・病期・治療歴に合う臨床試験または承認治療か
- 腫瘍へ直接投与できる場所があるか、静脈投与の研究か
- 発熱、炎症反応、感染対策など、予想される副作用と管理方法
- 抗がん剤、放射線治療、免疫チェックポイント阻害薬との順番・併用
- 研究段階の場合、参加条件、費用、通院方法、評価方法はどうなっているか
OUR RESEARCH PERSPECTIVE
研究の軸は、ACPとマクロファージ。
世界の新たながん治療も横断して読みます
がん治療の研究所では、がん細胞への直接的な作用を研究するACPと、がんを取り巻く免疫環境へ働きかけるマクロファージの研究を軸にしています。
ウイルス療法で研究されている「がん細胞を壊すこと」と「腫瘍微小環境を変え、免疫反応へつなげること」は、ACP・マクロファージ研究を考えるうえでも重要な視点です。
一つの治療法だけを見るのではなく、世界で進む治療研究から、どの作用を組み合わせ、どの順番で患者さんへ生かせるのか。新しい論文と臨床研究を継続して読み解いていきます。
FAQ
がんウイルス療法について、よくある質問
がんウイルス療法とは、どのような治療ですか?
がん細胞で選択的に増えるよう設計されたウイルスを利用し、がん細胞を内側から壊す治療です。がん細胞が壊れる過程で抗原や炎症の信号が放出され、免疫反応を促す作用も研究されています。
普通のウイルス感染とは違うのですか?
治療に用いる腫瘍溶解性ウイルスは、正常細胞への影響を抑え、がん細胞で増えやすくなるよう選択・改変されています。ただし、発熱などの反応や投与部位の症状を含め、安全性の確認が必要です。
日本で承認されていますか?
日本では、テセルパツレブ(G47Δ、デリタクト)が悪性神経膠腫を対象に条件及び期限付きで承認されています。ほかのウイルスやがん種の多くは、臨床試験・研究段階です。
難治性がんにも使えますか?
がん種、病変の場所、これまでの治療、身体の状態により異なります。難治性肝がんや進行肺がんなどでも臨床研究が進んでいますが、論文の結果を個々の患者さんへそのまま当てはめることはできません。