METASTASIS|患者さんとご家族のためのがん解説
なぜ、がんは転移・再発するのか?
転移は、がん細胞が移動先で生き残り、根づき、増殖することで成立します
「がんがほかの臓器へ転移しています」。そう説明を受けると、がん細胞が突然、身体の別の場所へ飛んでいったように感じるかもしれません。
実際には、がん細胞が元の組織から離れ、血管やリンパ管へ入り、身体の中を移動し、別の臓器へたどり着きます。そして、その場所の免疫や血流、炎症などの環境を利用しながら生き残り、再び増殖します。こうした複数の段階を経て、画像で確認できる「転移」となります。
移動したがん細胞のうち、転移として成長するのは一部です。多くは移動の途中で生き残れなかったり、別の臓器へ到達しても増殖せずにとどまったりします。また、一部は休眠状態となり、周囲の条件が変化したときに再び増殖を始める可能性があります。
転移とは、がん細胞が移動先で生き残り、根づき、増殖することです。がん細胞の性質と、その細胞を受け入れる身体の環境の両方が、転移の成立に関わっています。
がん細胞は、なぜ元の場所を離れるのか?
がん細胞は増殖を重ねるなかで、周囲の細胞とつながる性質が変化したり、組織との境界を越えて動く力を持ったりすることがあります。また、がんの周囲にある免疫細胞、血管、線維芽細胞なども、がん細胞が移動しやすい環境をつくることがあります。
つまり、転移は、がん細胞だけの力で起こるものではありません。がん細胞の変化と、それを取り巻く環境の変化が重なることで、元の場所を離れ、別の場所へ広がる過程が始まります。
転移は、移動の前後にある
「周囲の環境」と関わっています。

- 01原発巣免疫細胞、血管、線維芽細胞などに囲まれる
- 02血管へ侵入周囲の組織を越え、血液の流れに入る
- 03移動と生存多くは途中で生き残れず、一部が移動を続ける
- 04別の場所で増殖移動先の環境が整ったとき、転移として成長する
※転移の過程を分かりやすく整理した概念図です。実際の経過は、がんの種類や患者さんの状態によって異なります。
転移する場所には、偏りがあります
がん細胞は、身体のどこにでも同じように転移するわけではありません。血液やリンパ液の流れ、臓器ごとの組織の性質、免疫や炎症の状態などによって、がんの種類ごとに転移しやすい場所には一定の傾向があります。
移動してきたがん細胞と、その細胞が生きられる環境が合ったとき、そこで根づき、転移として成長する可能性が高まります。
再発とは、治療後に再びがんが確認されることです
再発とは、手術や薬物療法、放射線治療などによって、いったん画像や検査で確認できなくなったがんが、その後、再び見つかることをいいます。
治療によって確認できるがんを取り除いても、画像には写らないほど少数のがん細胞が残っている場合があります。その細胞が長い間増殖せずにとどまり、時間がたってから再び増殖を始めることが、再発に関係すると考えられています。
再発までの期間は、がんの種類や性質、治療内容、残った細胞と周囲の環境によって異なります。治療後すぐに見つかる場合もあれば、数年、あるいはそれ以上たってから確認される場合もあります。
再発には、3つの捉え方があります
再発は、見つかった場所によって大きく3つに分けられます。
- 局所再発:最初にがんがあった場所や、その近くに再び現れる
- 領域再発:周囲のリンパ節や組織に現れる
- 遠隔再発:離れた臓器や組織に現れる
このうち遠隔再発は、「転移」と重なる状態です。例えば、大腸がんの治療後に肝臓でがんが見つかった場合、それは肝臓から新しく発生したがんではなく、大腸がんが肝臓へ転移して再発したものと判断されることがあります。
本当に転移・再発なのか?
画像検査で新しい影が見つかったとき、その所見は転移や再発を考える重要な手掛かりになります。ただし、画像に写る変化のすべてが、がん細胞の増殖によるものとは限りません。
CTは病変の大きさや形、位置を捉え、MRIは組織の性質を詳しく調べるために使われます。PETは糖代謝などの活動性を画像にしますが、炎症や感染、手術・放射線治療後の修復過程でも集積が強くなることがあります。
そのため、転移や再発かどうかは一枚の画像だけではなく、以前の画像との比較、影の形や広がり方、原発がんの性質、症状、血液検査、治療歴などを合わせて判断します。判断が難しい場合には、時間をおいて再検査したり、別の画像検査や生検を検討したりすることがあります。
治療後に影が薄くなった、あるいは小さくなったという変化は、治療への反応を考える手掛かりです。一方で、画像上の縮小や集積の低下が、そのまま「がん細胞が完全になくなった」ことを意味するとは限りません。治療効果も、同じ条件で撮影した画像を時間を追って比較し、病状全体と合わせて評価することが大切です。
主治医へ確認したいこと
- 転移や再発と判断した根拠は、どの画像所見にあるのか
- 以前の画像と比べて、いつ、どのように変化したのか
- 炎症や感染、治療後の変化である可能性は考えられるか
- 追加の画像検査や経過観察、生検が必要か