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04|がんと免疫を知るM1・M2と腫瘍関連マクロファージ

MACROPHAGE POLARIZATION|患者さんとご家族のためのがん解説

M1・M2と
腫瘍関連マクロファージ

マクロファージは、周囲から受け取る信号によって、攻撃・炎症・修復の働きを変えます

マクロファージは、周囲の環境に合わせて働き方を変える、柔軟な免疫細胞です。細菌や異常な細胞へ働きかけるとき、傷ついた組織を修復するときでは、受け取る信号と担う役割が変わります。

研究では、この働きの方向を整理するために「M1」「M2」という言葉が使われてきました。M1は攻撃と炎症を支える方向、M2は炎症を収め、修復を支える方向を表します。

M1は、異常への攻撃と炎症を支える方向です

細菌やウイルス、傷ついた細胞などの危険を知らせる信号を受けると、マクロファージは炎症性サイトカインを出し、周囲の免疫細胞を集めます。取り込んだ異物や細胞を分解し、その情報を免疫へ伝える働きも高まります。

がんの周囲では、異常な細胞へ直接働きかけるほか、NK細胞やT細胞が動きやすい環境をつくる方向として捉えられます。研究上、このような状態を「M1様」と表現します。

M2は、炎症を収め、組織の修復を支える方向です

異物や傷んだ細胞の処理が進むと、身体は炎症を収め、組織を回復させる段階へ移ります。マクロファージは、細胞の修復、血管形成、組織の作り替えを支える信号を出し、元の状態へ戻る流れを整えます。

傷が治るために欠かせない働きであり、健康な身体でも日常的に使われています。研究上、この修復を支える方向を「M2様」と表現します。

FIGURE|M1・M2と腫瘍周囲の環境

がんがつくる信号が、マクロファージの働く方向へ影響します

攻撃を支えるM1様の働きから、がん周囲の低酸素や代謝物などの信号を受けて、修復や免疫抑制を支えるM2様の腫瘍関連マクロファージへ働きが傾く様子を示した概念図
M1様攻撃を支える方向

異常を捉え、炎症の信号を出し、NK細胞やT細胞の働きへつなぐ

周囲の環境働きを変える信号

低酸素、乳酸などの代謝物、慢性炎症、線維化、がん細胞が出す物質

M2様・TAM修復や抑制へ傾く方向

炎症を抑え、血管形成や組織の作り替えを支え、免疫反応を調整する

※M1とM2は、患者さん向けに働きの方向を整理した表現です。実際のマクロファージは、周囲の信号に応じて連続的に変化します。

実際の働きは、M1からM2まで連続しています

M1とM2は、マクロファージの働きを理解するための両端の目印です。身体の中では、攻撃、炎症、免疫調整、修復などの働きが混ざり合い、時間の経過やいる場所によって変化します。

同じ腫瘍の中にも、異なる働きを持つマクロファージが存在します。治療や身体の状態によって周囲の信号が変わると、同じマクロファージが別の方向へ働き始めることもあります。

がんの中で働くマクロファージを「TAM」と呼びます

がん組織の中やその周囲にいるマクロファージは、腫瘍関連マクロファージ(Tumor-Associated Macrophage:TAM)と呼ばれます。血液中の単球が呼び込まれて変化する場合と、もともと組織にいたマクロファージが加わる場合があります。

がん細胞、低酸素、乳酸などの代謝物、慢性炎症、線維化から信号を受け続けることで、TAMの働きは修復や免疫抑制を支える方向へ傾きやすくなります。前の記事のたとえでは、がんがつくる環境から「別の楽譜」を渡された指揮者にあたります。

TAMは、がんを取り巻く環境の流れを変えます

免疫反応を調整する

T細胞などへ抑制性の信号を送り、がんへの攻撃がまとまりにくい環境をつくる

新しい血管をつくる

酸素や栄養を運ぶ血管の形成を促し、がん細胞が育つ環境へ影響する

組織を作り替える

線維や細胞外マトリックスを変化させ、がん細胞が移動しやすい経路へ影響する

治療後の修復へ関わる

薬物療法や放射線治療で傷ついた組織の修復反応を通じ、治療への反応に影響する

こうした働きの強さは、がんの種類、進行度、治療歴、腫瘍の場所によって異なります。TAMのすべてが同じ方向へ働くわけではなく、がんへの攻撃を支えるマクロファージも存在します。

治療研究は、TAMの働きを変える方向へ進んでいます

マクロファージを標的とする研究では、腫瘍へ呼び込まれる流れを抑える、TAMの生存を調整する、免疫を抑える働きを弱める、がんを攻撃する方向へ働きを変えるといった方法が検討されています。

がん細胞が出す「食べないで」という信号を遮り、マクロファージの貪食を促す研究や、TAMを利用して薬剤を腫瘍へ届ける研究、遺伝子改変したマクロファージを用いる細胞療法も進められています。

多くは基礎研究や臨床試験の段階にあり、治療としての適応、安全性、ほかの治療との組み合わせが検討されています。

働きの方向と、マクロファージを取り巻く環境を見ます

マクロファージの数に加えて、どのような信号を受け、攻撃、炎症、修復のどちらへ働いているのかを見ることが、腫瘍微小環境を考える手がかりになります。

がん治療の研究所では、がん細胞だけを追うのではなく、慢性炎症、低酸素、代謝、血流、線維化、免疫細胞同士の関係を含め、マクロファージが本来の働きを発揮しやすい身体環境を研究しています。

この相互作用は、次の「腫瘍微小環境とマクロファージ」で、血管・低酸素・線維・免疫のつながりから整理します。

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